横浜園芸博で用いられる技術 バイオスウェルって何?──カインズや南町田で見られる「雨の道」

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園芸博で用いられる技術 バイオスウェルって何?

GREEN×EXPO 2027(2027年国際園芸博覧会)の会場計画には、「バイオスウェル(雨の道)」というグリーンインフラ技術が盛り込まれています。あまり聞き慣れない言葉ですが、実はホームセンターのカインズ昭島店や、東急田園都市線の南町田グランベリーパークなど、首都圏の身近な場所ですでに「本物」を見ることができます。

この記事では、バイオスウェルの仕組み、園芸博での位置づけ、そして実際に見学できるスポットまでをまとめて解説します。現地取材の写真つきです。

WHAT IS BIOSWALEバイオスウェルとは?──「雨の道」と呼ばれる仕組み

バイオスウェル(bioswale)は、砂利や石を敷き詰めた浅い溝に雨水を集め、時間をかけて地中へ浸透させる仕組みです。日本語では「雨の道」「雨のみち」とも呼ばれます。英語の swale は「浅いくぼ地・溝」を意味し、そこに植生(bio)の力を組み合わせたことが名前の由来です。

構造は驚くほどシンプルです。南町田グランベリーパークの例では、深さ70cmほどの帯状の溝を掘り、砂利を敷き詰めただけ。ここに舗装面から流れてきた雨水を集め、ゆっくりと土へ返していきます。

南町田グランベリーパークのバイオスウェル(雨のみち)
これがバイオスウェル。通路と植栽帯の間を砕石の溝が走り、舗装面の雨水を受け止める(南町田グランベリーパークにて2026年7月20日撮影)

水の流れを追うと、次の4ステップです。

STEP 1
屋根や舗装面に雨が降るアスファルトの上では雨水はしみ込めない
STEP 2
雨水が溝状のバイオスウェルに集まる敷地を囲む「雨の道」へ導水
STEP 3
砂利の隙間に一時的にたまる一気に下水・河川へ流さない
STEP 4
時間をかけて地中へ浸透ろ過による水質浄化・地下水の涵養も

一度に下水や河川へ流さず「ためて、しみ込ませる」ことで、豪雨時の川の氾濫リスクを下げ、地下水を涵養します。浸透の過程で雨水が自然にろ過されるため、水質浄化の効果もあります。

GREEN INFRASTRUCTUREなぜ今注目?グリーンインフラという考え方

バイオスウェルは、「グリーンインフラ」と呼ばれる取り組みの代表格です。グリーンインフラとは、コンクリート製の調整池や下水道といった人工物(グレーインフラ)だけに頼らず、土・石・植物など自然がもともと持つ力を、暮らしを支えるインフラとして活用する考え方を指します。

近年、都市部ではゲリラ豪雨による内水氾濫が深刻化しています。アスファルトに覆われた都市では雨水が地面にしみ込まず、短時間で下水や河川に集中してしまうためです。「降った場所でしみ込ませる」バイオスウェルは、この都市型水害への有効な対策として首都圏を中心に導入が広がっています。防災だけでなく、土壌の保水力向上、生き物のすみか、ヒートアイランド緩和など、複数の効果を同時に発揮できる点も特徴です。

国の後押しも本格化しています。国土交通省は2026年1月に「グリーンインフラ推進戦略2030」を策定。この戦略でGREEN×EXPO 2027は、グリーンインフラの国民的な機運醸成の舞台として位置づけられています(戦略2030と園芸博の関係はこちらの記事で詳しく解説しています)。

GREEN×EXPO 2027GREEN×EXPO 2027でのバイオスウェル

2027年3月19日から9月26日まで横浜市の旧上瀬谷通信施設で開催されるGREEN×EXPO 2027は、グリーンインフラを基軸とした会場計画を掲げています。会場となる上瀬谷の地には水田や湿地、草地といった自然環境のポテンシャルがあり、これを活かした会場づくりが進められています。

博覧会協会の資料によれば、その取組の一部としてバイオスウェル(雨の道)の整備が基本計画に位置づけられています。場内に降った雨水がバイオスウェルに集まり、地中へゆっくりとしみ込むことで、周辺河川への負荷を軽減する狙いです。会場の中央には和泉川が流れており、水とみどりの循環そのものが展示テーマと重なる構図になっています。

GOVERNMENT POLICY

政府の基本方針が掲げるのは「グリーンインフラで創る国際園芸博覧会」。開催後は上瀬谷のまちづくりをグリーンインフラ実装のモデルとして、国内の他地域へ水平展開していくことが目指されています。

興味深いのは、協会の持続可能性有識者委員会資料(2026年1月)で、バイオスウェルが「生物多様性の保全」の文脈で説明されている点です。洪水を防ぐ仕組みによって自然災害を防止することが、間接的に生物多様性の保全につながる——つまりバイオスウェルは単なる排水設備ではなく、防災・水循環・生態系をひとつながりで捉える会場計画の要素として位置づけられているのです。

設計の裏側も見えてきています。会場と重なる「(仮称)旧上瀬谷通信施設公園整備事業」の環境影響評価資料によれば、導入予定のグリーンインフラは、園路や駐車場沿いに帯状に整備するバイオスウェルに加え、地下の砕石層に雨水をためる「礫間貯留」の舗装型・雨庭型の計3種類。会場でも南町田と同じ「雨の道+雨庭」の組み合わせが計画されているわけです。しかも現地で浸透能試験を行い、大門川・和泉川・相沢川・堀谷戸川といった流域ごとに土壌の透水係数を測ったうえで、「区域外への雨水流出量を整備前と同程度にする」という目標に向けて規模や配置が検討されています。土地の水文条件を測って設計に落とし込む——グリーンインフラが感覚論ではなく工学であることがよく分かる資料です。

そして2026年7月、整備は「計画」の段階を越えました。横浜市が発行する「旧上瀬谷通信施設地区まちづくりニュース」第10号によれば、公園の園路には芝生や多年草に覆われたバイオスウェルがすでに姿を現しています。雨水をゆっくり土に浸透させることで、周りの植物にも水が行き渡り、公園内の植物が健全に育成される——排水と植物育成がひとつの仕組みでつながる、まさに園芸博ならではのバイオスウェルです。会場跡地の大部分は「環境」と「防災」をテーマとした(仮称)旧上瀬谷通信施設公園となる予定で、既存樹木1,600本以上の移植や、相沢川の自然素材を使った護岸整備も並行して進んでいます。

旧上瀬谷通信施設地区の公園園路に整備されたバイオスウェル
公園の園路にすでに整備されているバイオスウェル。多年草に覆われた砕石の帯が園路に沿って弧を描く

出典:横浜市 脱炭素・GREEN×EXPO推進局「旧上瀬谷通信施設地区まちづくりニュース 第10号」(PDF・令和8年7月発行)

また、関係省庁の取組としても、国土交通省によるグリーンインフラの暑熱緩和効果や雨水浸透効果の実証、日本のグリーンインフラ技術・実装事例の企画展示などが検討されています。つまり園芸博の会場は、グリーンインフラの「ショーケース」であると同時に「実証の場」にもなるわけです。

※ご注意:会場計画・展示内容は今後変更となる可能性があります。環境影響評価の資料は審査会用に作成されたもので、審査の過程で内容が変更されることがあります。最新情報は博覧会協会・横浜市の公式発表をご確認ください。

CASE 01実例①:南町田グランベリーパーク「雨のみち」

「開幕前に本物を見てみたい」という方におすすめなのが、東急田園都市線・南町田グランベリーパーク駅直結の南町田グランベリーパークです。横浜駅からも約40分とアクセスしやすい立地です。

2019年にまちびらきしたこのエリアは「すべてが公園のようなまち」をコンセプトに、まちづくり全体へグリーンインフラを組み込んだ先進事例です。敷地周辺を囲むように、石を敷き詰めた隙間の多い溝状の「バイオスウェル(雨のみち)」が配置され、さらに敷地南東角にはくぼ地状の植栽帯「レインガーデン(雨のにわ)」が整備されています。舗装面に降った雨をなるべく排水させず敷地内で浸透させることで、まち全体の雨水処理の負担を軽減しています。

買い物のついでに足元へ目を向けると、通路脇に砂利敷きの帯が続いているのに気づくはずです(冒頭の写真がまさにその光景です)。現地にはレインガーデンの解説サインも設置されており、「バイオスウェル(雨のみち)とレインガーデン(雨のにわ)というふたつの仕組みを使って、パーク内に降った雨水をなるべく排水せず地中に浸透させている」と、まさに両者セットの考え方が説明されています。窪地状の植栽帯には水の多い場所を好む湿生植物が植えられ、大雨の日には池のように水を蓄えてゆっくり浸透させる仕組みです。

南町田グランベリーパークのレインガーデン(雨のにわ)
敷地南東角のレインガーデン(雨のにわ)。湿生植物に囲まれた玉砂利敷きの窪地に雨水が集まり、大雨の日は池のように水を蓄える(2026年7月20日撮影)
南町田グランベリーパークに設置されたレインガーデンの解説サイン
レインガーデン脇に立つ解説サイン。バイオスウェル(雨のみち)との併用が図解され、ヘッダーにはLEED認証のマークも掲げられている(2026年7月20日撮影)

この質の高い空間整備は評価され、令和2年度都市景観大賞では国土交通大臣賞を、第1回グリーンインフラ大賞では優秀賞を受賞。さらに、グリーンインフラを生かしたランドスケープデザインなどが評価され、世界的な環境認証「LEED」のまちづくり部門(ND)・新築部門(NC)でゴールド認証を取得しています。駅舎建築物・駅舎を含む開発エリアでのゴールド認証取得は、いずれも国内初。まちづくり部門の申請者には東急とともに町田市が名を連ねており、官民連携でグリーンインフラを実装した点も注目に値します。

LEEDとは?

環境認証ミニ解説

Leadership in Energy and Environmental Design。米国のNPO・USGBCが開発・運用する、建築や都市の環境性能評価システムです。必須条件を満たした上で選択項目のポイントを積み上げ、合計点で認証レベルが決定。世界で最も広く利用されているグリーンビルディング評価制度で、南町田グランベリーパークは2020年に、まちづくり部門(約15ha)と新築部門(駅舎)でゴールド認証を取得しました。

ちなみに、バイオスウェルやレインガーデンは調整池・雨水貯留槽といった従来型の対策を置き換えるのではなく、それらに「加える」形で導入されている点もポイント。グレーインフラとグリーンインフラの合わせ技こそが、現実のまちづくりの姿です。町田市によれば、まちの中には工夫ポイントを紹介するサインが散りばめられているとのこと。先ほどの解説サインもそのひとつです。まちを巡りながらサインを探して歩けば、園芸博の会場デザインを先取りする「歩いて学べるグリーンインフラ」を体感できるでしょう。

そして町田市が最後に語るのは、装置の話を超えた思想です。駅・商業施設・公園がつながる歩行者中心のまちに生まれ変わり、随所のみどりや広場で気持ちよく過ごせる——南町田グランベリーパークというまちそのものが、暮らしを豊かにする「グリーンなインフラ」だという考え方。バイオスウェルは、その思想が足元に現れたひとつのかたちなのです。

CASE 02実例②:カインズ昭島店の「雨庭」モデル施設

もうひとつ、より新しい事例がホームセンター・カインズの取り組みです。カインズは東京都都市整備局と「雨水流出抑制に資するグリーンインフラモデル施設に関する協定」を締結し、2025年12月、青梅インター店と昭島店の2店舗に「雨庭(レインガーデン)」のモデル施設を設置しました。筆者も2026年7月に昭島店を訪れ、実物を見てきました。

カインズ昭島店に設置された雨庭の解説看板
カインズ昭島店の雨庭解説看板。東京都都市整備局「雨水しみこみプロジェクト」の一環で、世田谷トラストまちづくりが協力している(2026年7月19日撮影)

現地の看板によれば、この施設は東京都の「雨水流出抑制に資するグリーンインフラ先行実施事業」に参画し、補助を受けて設置されたもの。屋根に降った雨を雨どいから貯水タンクに集め、あふれた分を雨庭で貯留・浸透させるという、一般家庭でそのまま再現できるスケールの構成になっています。雨庭は雨水を一時的に貯めてゆっくり地面に染み込ませる庭のことで、浸水対策やヒートアイランド緩和に効果があると紹介されていました。溝状のバイオスウェルとは形が異なりますが、「ためて、しみ込ませる」原理は同じ、雨水浸透型グリーンインフラの仲間です。

カインズ昭島店のエクステリア売場に設置された雨庭モデル施設
エクステリア売場の一角に設置された雨庭。砕石の間にトクサやシモツケ、ローズマリーなどが植えられている(2026年7月19日撮影)

実物はエクステリア売場のフェンス展示の足元にあり、色の異なる砕石を敷いた植栽帯にトクサやシモツケ、ローズマリーといった植物が根付いていました。フェンスや庭石の売場と地続きになっているのが面白いところで、来店客が雨庭を間近で体験し、そのまま雨水タンク・砕石・植栽など必要な資材を店内で購入して自宅に導入できる——「見て、学んで、つくる」までが一続きになっています。園芸博が掲げる「暮らしへの実装」を、ホームセンターという場で先行して体現している事例と言えるでしょう。カインズによれば、今後は東京都による効果の検証などにも協力していくとのことです。

COMPARISONバイオスウェルとレインガーデンの違い

ここまで登場した2つの技術を整理しておきます。どちらも雨水を浸透させるグリーンインフラですが、形状と役割に違いがあります。

バイオスウェル

雨の道

細長い溝状。砂利や石を敷き詰め、雨水を集めて運びながら浸透させる「道」。敷地や園路に沿って帯状に配置される。

レインガーデン

雨庭・雨のにわ

くぼ地状の植栽帯。草花や低木を植え、雨水をためて浸透させる「庭」。雨の日だけ小さな池のように水がたまる。

比較項目バイオスウェル(雨の道)レインガーデン(雨庭・雨のにわ)
形状細長い溝状。砂利や石を敷き詰めるくぼ地状の植栽帯。草花や低木を植える
主な役割雨水を集めて運びながら浸透させる「道」雨水をためて浸透させる「庭」
見た目砂利敷きの帯が敷地を囲む雨の日だけ水がたまる小さな庭
見られる場所南町田グランベリーパーク、GREEN×EXPO 2027会場(計画)カインズ昭島店・青梅インター店、南町田グランベリーパーク南東角、GREEN×EXPO 2027会場(礫間貯留・雨庭型として計画)

実際のまちづくりでは、南町田のように「道」で集めて「庭」でためるという形で、両者を組み合わせて使うケースが多く見られます。園芸博の会場でも、こうした水の流れのデザインに注目して歩くと、景観の見え方が変わってくるはずです。

SUMMARYまとめ

  • バイオスウェルは砂利敷きの溝に雨水を集め、地中へゆっくり浸透させる「雨の道」。都市型水害対策の切り札となるグリーンインフラ
  • GREEN×EXPO 2027では基本計画にバイオスウェルの整備が位置づけられ、洪水防止を通じて生物多様性保全にもつながる要素として、会場全体がグリーンインフラのショーケース兼実証の場になる
  • 南町田グランベリーパークでは溝状の「雨のみち」を、カインズ昭島店では2025年12月設置の「雨庭」モデル施設を、いまから実際に見学できる
  • バイオスウェル(道)とレインガーデン(庭)は形は違えど「ためて、しみ込ませる」原理は同じ仲間。会場でも両者の組み合わせが計画されている

「万博の技術」と聞くと遠い存在に感じますが、バイオスウェルはすでに私たちの生活圏に静かに広がっています。開幕までの間に南町田やカインズで本物を見ておけば、2027年春、上瀬谷の会場で足元の砂利の帯を見つけたとき、その意味がきっと分かるはずです。GREEN×EXPO 2027は、そんな「気づく目」を育ててくれる博覧会でもあります。

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