イタリア館|GREEN×EXPO 2027パビリオン・展示紹介
コンセプトは「麦の建築」― 自然・伝統・革新の調和を設計するイタリアItaly Pavilion|イタリア館
2026年7月9日に公式参加契約を結んだイタリア館。8月に公開された発注資料から、建築と展示の中身が見えてきました。コンセプトはARCHITECTURE OF WHEAT(麦の建築)。協会が供給する規格建築「GXハウス」を、木と自然素材でできた楕円形の外皮で包む構成です。区画は国際出展エリア6の6A・660㎡。大阪・関西万博のイタリア館で使われた設備や屋上庭園も横浜へ引き継がれます。この記事では、設計内容から公募の状況、会場での位置までをまとめます。
| 国・地域 | イタリア共和国 |
|---|---|
| 出展テーマ | 自然・伝統・革新の調和を設計するイタリア |
| 建築コンセプト | ARCHITECTURE OF WHEAT(麦の建築) |
| 構成 | 協会が供給する規格建築「GXハウス」+木造の「第二の外皮」(ファサード) |
| 陳列区域政府委員 | マリオ・アンドレア・ヴァッターニ 駐日イタリア大使 |
| 発注者 | イタリア大使館貿易促進部(ITA・イタリア貿易振興機構 東京事務所) |
| 公式参加契約 | 2026年7月9日、駐日イタリア大使館で調印 |
コンセプトは「麦の建築」
公開資料によると、イタリア館は干し草を積み上げた「covone(コヴォーネ)」を現代的に解釈したところから生まれています。収穫物を集め、蓄え、守るという行為から生まれたイタリア農村建築の原型で、地域ごとに異なる積み方の伝統を、ひとつの本質的な建築の形にまとめたという説明です。
素材は木と自然繊維。イタリアの農業景観と、そこに射す光を思い起こさせる形をめざすとされています。
麦が、イタリアと日本をつなぐ
資料では麦を「共有された遺産の象徴」と位置づけ、両国の品種の出会いから生まれた、研究と革新の歴史がイタリアと日本を結んでいると説明しています。館内の展示エリアの一覧にも、イタリアの農学者ナザレノ・ストランペッリ(1866〜1942)に充てられた区画が置かれています。
ストランペッリは、さび病に強いイタリアの在来種「リエーティ」、多収のオランダ品種「ウィルヘルミナ」、そして日本の「赤小麦(あかこむぎ)」を掛け合わせ、茎が短く早く実る「アルディート」を育成した人物です。短稈性と日長非感受性という2つの性質をあわせ持つ品種群は、戦後に各国の育種で親として使われ、ノーマン・ボーローグが進めた「緑の革命」の初期にも役割を果たしたとされています。
日本の麦とイタリアの麦が交わってできた品種の系譜が、そのまま横浜のパビリオンのモチーフになっている、という組み立てです。
GXハウスを覆う「第二の外皮」
イタリア館は、ゼロから建物を建てるのではなく、GREEN×EXPO 2027のために用意される規格建築「GXハウス」を土台にします。10m×10mのモジュール建築で、その外側にもうひとつの楕円形の外皮をかぶせることで、イタリア館としての姿をつくる、という考え方です。
資料には、成り立ちを4つの段階で示した図が添えられています。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 01 Plot | 区画(660㎡) |
| 02 GX House | 協会が供給する10×10mの規格建築を配置 |
| 03 Double facade | その外側に楕円形の「第二の外皮」をかぶせる |
| 04 Landscape | 周囲に植栽と園路を配し、庭として仕上げる |
庭には、大阪・関西万博のイタリア館のためにつくられた屋上庭園を転用・改変して用いるとされています。資料では、この再利用を意識的な設計上の選択と位置づけています。
三角形モジュールでつくるファサード
外皮は、同じ形の三角形の構造モジュールを並べる方式です。製作・組立と、その後の解体をしやすくすることを意図した構成で、三角形の幾何形状によって高い安定性と剛性が得られるため、内側のGXハウスとは構造的に独立しているとされています。
基礎についても、恒久的な基礎工事を行わず、簡易なプレファブ基礎の上に載せる方式が示されています。敷地への影響を抑えるためと説明されています。
| 部位 | 内容 |
|---|---|
| (1) 基礎台 | 石材またはプレキャストコンクリート |
| (2) 構造体 | 無垢材(長さ約6m) |
| (3) パネル | ファサードに吊り下げるパネル。素材は複数案 |
| (4) ポータル | エントランス部分の門型 |
館内と屋外の構成
館内 ― 中央の展示空間と一方通行の順路
来館者の体験の中心になるのは、館の中央に置かれた展示空間です。順路は一方通行で、途切れずに流れる動線が想定されています。中央の空間の片側には小さな緑の中庭に面したオフィスとラウンジ、もう一方には設備・サービス関係の諸室が並びます。公式の接遇スペースへは、VIP専用の入口から別に入れる構成です。
- 一般入口/VIP入口/一般出口
- クローク、コントロールルーム、ラウンジ
- 展示エリア兼会議室
- 内庭(インターナルガーデン)
- 水素発電機
- ナザレノ・ストランペッリに充てた展示エリア
- ケースに収めたアート作品の展示エリア
屋外 ― ステージと飲食エリア、州の彫刻
屋外にはステージと飲食エリアが設けられ、園路に沿ってコルテン鋼のプランターと植栽が置かれます。舗装は黒い砂利。イタリアの州を表す彫刻を設置する予定のエリアも図面上に示されています。
展示内容 ― 大阪からの引き継ぎ
イタリアの出展テーマは「自然・伝統・革新の調和を設計するイタリア」。豊かな文化、自然と共に歩んできた知恵、そして革新的な技術を通じて、持続可能な未来に向けたビジョンを紹介する予定です。
大阪・関西万博イタリア館の要素を再利用
公式参加契約の調印で示された最大の特色が、2025年大阪・関西万博イタリア館から建築および展示要素の一部を取り入れるという方針です。大阪で多くの人々に親しまれた要素に新たな命を吹き込むことで、イタリアは、貴重な資源の責任ある再利用を通じ、循環経済と持続可能性への強いコミットメントを示すことを目指すとしています。
8月の発注資料では、その中身がより具体的に示されました。工事の対象には、大阪で使われ横浜での再利用が予定されている資機材の設置・調整・統合が含まれます。例として挙げられているのは次のものです。
- 映像・音響機器
- 照明設備
- 什器類
- プランターなど屋外空間の構成部材
庭についても、前述のとおり大阪でつくられた屋上庭園を横浜で作り直す形が想定されています。
イタリア側報道より ― 水の効率利用と強靭な作物に焦点
イタリア側の報道(Agenzia Nova)によると、横浜の新しいパビリオンは大阪のイタリア館の建築・演出要素を責任をもって再利用する強いエコロジー志向のプロジェクトとなり、ガイド付きの観覧ルートでは、農業イノベーション分野の水利用効率のシステムや気候変動に強い作物に焦点を当てた先進的な展示を通じて、伝統的な知恵とテクノロジーの融合による環境保全の具体的なソリューションを提示するとされています。園芸博の主題とも強く響き合う内容です。
大阪・関西万博で人気を集めた「イタリア館」
大阪・関西万博のイタリア館は、ファルネーゼ・アトラスやレオナルド・ダ・ヴィンチの手稿など、イタリアが誇る“本物”の至宝を展示。現代アートや職人技、各州の文化に加え、ローマ教皇庁による展示も融合させた没入感のある体験で、連日長い列ができるほどの人気を集めました。この体験が横浜でどう受け継がれるのか、注目したいところです。
公式参加契約の調印と日伊160周年
GREEN×EXPO協会は2026年7月9日、駐日イタリア大使館においてイタリアとGREEN×EXPO 2027の公式参加契約を調印したと発表しました(7月13日発表)。
イタリアの参加は、2026年1月16日の日伊首脳会談で、メローニ首相から高市総理大臣に表明されていたものです。日伊外交関係樹立160周年の節目の年に、表明から約半年で公式参加契約の調印に至りました。
用語メモ ―「陳列区域政府委員」とは
協会発表によると、日本国政府から本博覧会への公式の参加招請を受諾した外国政府及び国際機関を「公式参加者」と呼称し、「陳列区域政府委員」は本博覧会においてそれぞれの公式参加者を代表する役職です。今回イタリアの陳列区域政府委員を務めるのは、大阪・関西万博でイタリア政府代表(コミッショナー)を務めたヴァッターニ駐日イタリア大使。大阪の経験が横浜にそのまま受け継がれる体制です。
なお、調印に同席した「博覧会政府委員」(新美潤 政府委員)は、臨時措置法に基づき日本政府により任命され、本博覧会について日本国政府を代表する役職です。
建設の進み方と施工事業者の公募
今回設計内容が明らかになったのは、イタリア大使館貿易促進部が施工事業者を探すために出した「マーケット・コンサルテーション公告(参加意思表明募集)」に、プロジェクト資料が添付されていたためです。公告は2026年8月19日にウェブサイトで公開されました。
注目したいのは、GXハウス本体は協会が直接供給し、組立・設置まで行うと明記された点です。公告では、協会から伝えられた実施体制の更新に伴う変更と説明されています。
6月の市場調査からの動き
イタリア側は2026年6月18日にも、イタリア館の建設に向けて「GX House」供給事業者を探す市場調査を公示していました。当時の公示文書では、GXハウスの施工は協会の公募で認定された「GX Houseサプライヤー」に限定され、そこにイタリア側が指名する設計者が建築・機能・設備のカスタマイズを加える、という枠組みが示されていました(工事費の想定規模は約2億5,000万円・税抜の目安、関心表明の期限は7月5日)。
8月の公告では、GXハウスの供給・設置が協会側に移り、発注の対象はファサードから内装・設備・外構までの「仕上げ」部分に整理されました。想定契約金額や対象範囲は6月時点とは前提が異なります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発注者 | イタリア大使館貿易促進部(ITA・イタリア貿易振興機構 東京事務所) |
| 対象工事 | 特注ファサード、付帯工事、内装・展示工事、MEP設備工事(機械・電気・給排水)、外構工事 |
| 含まれるもの | 実施設計、大阪・関西万博イタリア館の資機材の再利用、会期中の通常保守、会期後の撤去(発注者が求めた場合) |
| 想定契約金額 | 200万ユーロ(3億6,918万円)/消費税・諸税別 |
| 参加要件 | 日本の法令に基づく一級建築士(Architect of Record)を確保していること ほか |
| 手続き | イタリアの調達プラットフォーム「TRASPARE」への事業者登録が必須 |
| 締切 | 2026年9月6日(日)23:59(日本時間) |
円換算額は、イタリア銀行の2026年8月17日レート(1ユーロ=184.59円)によるものです。この段階は市場調査であり、入札そのものではないと公告に明記されています。
設計者の名前は公開資料に記載されていません。今後の発表を待つことになります。
会場のどこにできる?
イタリア館が入るのは、国際出展エリア6の区画6A。海外の国・国際機関が自前で庭園やパビリオンを建てる屋外展示区画のひとつで、Urban GX VillageとFarm & Food Villageのあいだ、会場を貫くメインの動線に面した位置にあります。
3月時点の区画図では6Aは512㎡でしたが、イタリア側の最新資料では660㎡となっています。区画割りは検討中の段階で、今後変更される可能性があります。
GREEN×EXPO 2027 開催概要
| 正式名称 | 2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027) |
|---|---|
| 会期 | 2027年3月19日(金)〜9月26日(日) |
| 会場 | 旧上瀬谷通信施設(横浜市瀬谷区・旭区) |
| 全体テーマ | Scenery of the Future for Happiness(幸せを創る明日の風景) |
イタリア館のコンセプトは「麦の建築」。協会が供給するGXハウス(10×10m)に、三角形モジュールでつくる木の外皮をかぶせ、周囲を庭で仕上げます。区画は国際出展エリア6の6A・660㎡です。
大阪・関西万博のイタリア館の映像機器・照明・什器・プランター、そして屋上庭園が横浜へ引き継がれ、循環経済への姿勢を建物そのもので示す構成になっています。麦という主題も、日本の赤小麦がイタリアの育種を通じて世界に広がった歴史をふまえたものです。
施工事業者の参加意思表明は2026年9月6日締切。ここから実施設計と工事に進みます。続報が出たらこの記事に追記します。
・【保存版】横浜園芸博のパビリオンは?|Village別 出展企業リストと最新情報
・GREEN×EXPO 2027 公式参加国・国際機関まとめ
・イタリア、横浜園芸博参加を表明|日伊160周年・メローニ首相訪日で共同声明
出典・関連リンク
・イタリア大使館貿易促進部「Market Consultation Notice and Call for Expressions of Interest/マーケット・コンサルテーション公告(参加意思表明募集)」(2026.8.19)
・イタリア大使館貿易促進部「2027年国際園芸博覧会におけるイタリア館の建設に向けて、「GX House」供給事業者の市場調査」(2026.6.18)
・GREEN×EXPO協会「イタリアとGREEN×EXPO 2027が公式参加契約を調印 〜大阪・関西万博のイタリア館の感動を再び〜」(2026.7.13)
・Italia-Giappone: firmato a Tokyo il contratto di partecipazione a GreenxExpo 2027 Yokohama|Agenzia Nova(伊語)
・TRASPARE(ICEの調達プラットフォーム)
・ICE|TRASPARE 日本語ガイド
※2026年8月時点の公開資料にもとづく内容です。設計・区画・数値は今後変更される可能性があります。最新情報は各公式サイトをご確認ください。

